ICCS 国際中国学研究センター

研究活動

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第13回研究会

  • 日時:2010年2月25日(木)13:00~15:30
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:「国際システムの変容とその学術的視点」


 国民国家を主たるアクターとするいわゆる「ウェストファリア体制」は、国際システムの底流としてなお機能している。しかし、グローバル化が進む今日の世界の実態とその変動力学をいかに理解すべきか、こうした思考枠組をめぐる研究蓄積は、国際関係論を中心とする学術界のテーマであり続けてきた。本報告では、(国際)政治システムへの視点について主たる学術的議論の整理を試み、ポスト冷戦期における世界システム(の終焉?)に関して議論した。
 まず、D・イーストンが提示した政治システム論を引用し、政治的共同体としての国際政治システムとそこでの機能主義的発展を国連システムに適用した。同時に国連システムにおける構造論的考察を行ったうえで、新自由主義的制度論の妥当性と課題を提示した。結論的には、A・ウェントらの構成主義が主張する概念変容力学について国連システムを事例に検証した。
 公衆衛生領域など主権概念の変容を誘引する今日的課題は、国連機関の政策理念の転換と相互作用する。こうしたシステム変容力学を前提として、F・フクヤマの理論を再検討すれば、その民主国家の真意が実現するまでにはなお長い時間を要すことが理解される。質疑応答では、現実主義が想定する国家利益の追求という合理的選択について、「合理性」の真偽が問われた。


第12回研究会

  • 日時:2010年2月19日(金)13:00~15:30
  • 場所:435研究室
  • 報告:成田拓未(ICCS研究員)
  • テーマ:「中国農民専業合作社法施行後の農民組織化の現状」


中国では2006年に「中華人民共和国農民専業合作社法」が公布され、2007年の施行以来続々と農民専業合作社が設立されている。農民専業合作社は、協同組合原則に基づく農民組織として、中国の三農問題の解決策の一つとして注目されている。しかし、中国における「合作社」の歴史は必ずしも順調ではなかった。人民公社の失敗は農民に「合作社」への嫌悪感を植えつけ、また農業資材や農産物の流通をになった供銷合作社は改革開放とともに役割を縮小し、また企業的性格も強くしつつある。よって、農民専業合作社が本当の意味での合作社=協同組合として発展していくか否かが今後の重要な関心事となる。

そこで本報告では、個々の合作社の運営を直接的に規定する定款の内容と、合作社の運営実態について、議決権の行使状況、剰余分配の方法等に着目して検討した。その上で、合作社の協同組合的性格についての検討を試みた。

合作社によって、定款の規定と実際の運営実態は必ずしも一致していない。例えば、①剰余があるにも関わらず分配が行われていない、②一人一票の原則を逸脱するものの法律・定款が認めている「付加議決権」の規定については、実際は行使していないなどである。一方、社員への利益分配を実施し、農民の手取りを向上させている例もある。

設立初期であり、合作社の運営実績は十分蓄積されていない。現状では、合作社は多くの問題をはらんでいるが、協同組合としての発展していく芽もあり、今後の動向に一層注目する必要があるとした。

報告を受けての議論では、三農問題解決に果たす合作社の役割と限界、国家の統治に対して合作社が果たす役割など、幅広い見解が出された。


第11回研究会

  • 日時:2010年1月21日(木)15:00~17:00
  • 場所:435研究室
  • 第一報告:閔海蘭(立命館大学経営学研究科院生)
  • テーマ:「日系製造業の対中投資とタックス・ヘイブン対策税制―来料加工を中心に―」
  • 第二報告:潘梓騰(立命館大学経営学研究科院生)
  • テーマ:「電子商取引における課税問題の再考察~無体資産、サービス提供 企業の視点から~」


今回は、立命館大学経営学研究科から二人の院生を招き、それぞれが取り組んでいる修士論文について、報告を行ってもらった。

第一報告は、閔海蘭氏の、香港子会社を経由して行う来料加工に対して、国税局がタックス・ヘイブン対策税制を適用したため、裁判所で争われたケースについての研究であった。日中間の直接投資の一形態として来料加工が行われているが、香港を経由した場合は、香港子会社の事業が何に当たるかが、タックス・ヘイブン対策税制適用の分岐点となることについて、日本で初めてこの件について出された判例を基に、議論が展開されていた。

第二報告は、潘梓騰氏の、電子商取引と課税の問題について、アリババグループを例に、どのようなケースで税が失われる可能性があるのかについて、OECDでの議論を踏まえて論点の整理を行った研究である。整理から、消費者(Consumer)が電子商取引の売り手、もしくは買い手となる場合に、課税関係が不安定になる点を明らかにするとともに、アリババグループなどの電子商取引を仲介する事業者が、課税を行う際のポイントとなることを指摘している。

いずれの研究も、細部でロジックが破綻していたり、表現が不適切であったりしたため修士論文としては未完成であるが、扱っているテーマに新規性があり、完成が楽しみな研究であった。

また、今回初めて他大学の院生が報告したが、若手研究者を中心とした他大学も含めた学術交流の場として、非常に有意義であった。今後も、機会を見てこのような取り組みをしていくことを確認した。


第10回研究会

  • 日時:2009年12月3日(木)13:00~15:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:宇都宮浩一(ICCS研究員)
  • テーマ:「納税者が国籍を離脱する手法について」


国境を跨ぐ納税者の行動は、課税当局からすれば課税管轄権に対する挑戦であり、各国はサブ・プライム危機以降、税収流出に懸念を示している。これについて、2009年4月にロンドンで開催されたG20サミット、およびこれを受けてOECDが作成したタックス・ヘイブンのリストについて説明した。
また、納税者がさまざまな手法を駆使して課税管轄権をくぐり抜けている実態について、その具体的手法の一つであるタックス・ヘイブンの利用形態(投資ファンド、特定目的会社、キャプティヴ保険など)およびコーポレート・インバージョンについて、その仕組みを説明すると共に、事例としてタックス・ヘイブンとして著名なケイマン諸島に所在するUgland Houseに関する米国会計監査院報告書、またコーポレート・インバージョンの実例として、Seagate Technology社を取り上げた。
これらの報告を受けて行われた議論では、高橋五郎教授から「タックス・ヘイブンを分析するに当たっては、具体的且つ詳細な統計データが必要である」「タックス・ヘイブン内の格差、特に現地民と外国人の経済・所得格差および就業構造を見るべき」との指摘がなされた。


第9回研究会

  • 日時:2009年11月19日(木)13:00~14:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:「台湾の「WHO参加」とその決定要因」


2009年5月、中華台北(Chinese Taipei)が世界保健機関(WHO)の年次総会にオブザーバー参加を果たす。翌月、マーガレット・チャンWHO事務局長は、「2009年インフルエンザ・パンデミック」宣言を「我われ全員でこの事態に取り組み、ともに乗り切ろう」と締めくくった。これを機にWHOの管轄内に台湾が含まれることとなったが、これは従来国連システムにおける「中国」の地位が、非国家主体である台湾の不在を前提としていた証左にほかならない。
そのシステム変動要因についてジョセフ・ナイが提唱したソフトパワー論を引用し考察した。すなわち1)WHO理念(Health For All)が、2)WHOの公衆衛生政策・法整備を経ることで、3)台湾の参加承認として具現化した。この過程を検証すると同時に、上記理論が内包する米国政治向けのバイアスや、その後の理論的混乱についても精査した。
報告に続く質疑応答では、企業による政策への関与を視野に入れ、多国籍企業の影響力とソフトパワーとの相違と重複について議論が展開された。


第8回研究会

  • 日時:2009年7月14日(火)11:00~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:成田拓未(ICCS研究員)
  • テーマ:「中国産野菜対日輸出量減少下における日系野菜生産輸出企業の新動向」


日本は、中国にとって最大の野菜輸出先であるが、2005年以降輸出量は減少傾向にある。中国産野菜に対する安全性問題にかかわる事件が明らかとなるたびに、対日輸出が停止・停滞し、また農場・工場管理徹底への追加コストが生じ、その意味で日本は中国野菜輸出企業にとってリスクの高い市場として位置づけられつつある。こうした中で、一部中国野菜輸出企業は、事業再編の一環として内販への取り組みを開始している。その実態は、日本向け輸出事業で培った農場・工場管理のノウハウを生かして、有機認証を取得し、高付加価値の野菜を生産し、宅配、スーパー直売、飲食店卸を通じて小口需要へ対応することである。同時に、端緒段階にある内販への取り組みが抱える課題も山積している。品目別の需要に応じた生産体系の構築によるロスの低減、中国人の顧客獲得、大消費市場への出荷に伴う物流問題の解決、等である。以上のように、対日野菜輸出の状況変化に対応して、中国野菜輸出企業が戦略の再構築を迫られていることを、実態調査に即して報告者から紹介された。


第7回研究会

  • 日時:2009年7月7日(火)15:00~16:30
  • 場所:435研究室
  • 報告:宇都宮浩一(ICCS研究員)
  • テーマ:「国際課税問題の政治的側面」


国際課税問題の政治的側面、とくに課税管轄権の重複と二重課税問題が取り上げられた。経済活動のグローバル化によって、個人や企業の課税対象所得が国外へ移転するケースが増えているが、各国の課税当局は居住地主義や源泉地主義など様々な論拠を示して自国民の所得であると主張し、課税管轄権を拡大している。その論拠は、先進国が主導するOECD租税委員会のモデル条約を中心に形成、基準化されている。課税管轄権が重なり合う場合には二重課税が生じるが、経済活動を行う動機を毀損することから、租税条約や二国間協議によって調整されることになる。その調整もまた多分に政治的であり、たとえば1980年代のオート・ケース、2009年4月のG20、同年7月のAmazon.com社に対する東京国税局の追徴課税と二国間協議設置などに象徴されるように、先進国の作ったルールに基づきつつも、最終的には当事国同士の政治的調整が行われている、との指摘が報告者からなされた。 これに対して、課税当局によって手続きに則った処理が行われている限りでは政治的調整が行われているとは言えない点が指摘された。これについては、国際的な基準が先進国主導で制定されている点がまさしく政治的過程を経ており、また現実の決着には法的手続きを越えた処理が行われている例が示された。


第6回研究会

  • 日時:2009年6月23日(火)15:00~17:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:「国連安保理の北朝鮮政策決議をめぐる中国の政策」


北朝鮮外務省は、安保理議長および国際原子力エネルギー機関(IAEA)事務局長あて書簡(1993年3月12日)において核拡散防止条約からの脱退を示唆した。これに対し同年5月、国連安保理は適切な解決へ向けた協議を行い、IAEAの予防措置に応じるよう要請した決議825を採択する。これが、北朝鮮の核開発・ミサイル開発問題をめぐる安保理による初の反応である。  その後、2006年7月には北朝鮮による弾道ミサイルの複数発射を受け、決議1695を採択し、核拡散防止条約からの脱退声明の取り消しと、北朝鮮が核兵器の放棄に合意した六カ国協議共同声明の履行を要求した。また同年10月、初の核実験を実施した北朝鮮に対し、国連憲章に基づく経済制裁などを規定した決議1718を採択し、国連加盟国に核その他の大量破壊兵器、および弾道ミサイル計画に関与・支援する人物または団体の資金、金融資産の凍結を要請する。  さらに今年に入り、4月のミサイル発射に対する議長声明、および6月の核実験をめぐる制裁決議(決議1874)と続く。本報告は、中国政府の安保理政策過程に着目し、これまでの決議・議長声明採択へむけた協議姿勢と、張業遂国連大使や外交部による声明を基に本決議へむけたそれとを比較した。以前は制裁決議の採択自体に消極的であったが、今回については決議を前提とした文言調整に注力したとの相違が見いだされた。同時に、中国政府は、安保理の経済制裁と六カ国協議との複線的協議の維持を重視するが、研究会ではその有効性に対する疑問が提起された。


第5回研究会

  • 日時:2009年6月9日(火)13:00~15:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:宇都宮浩一(ICCS研究員)
  • テーマ:「企業の国籍・・・課税管轄が根拠となるのではないか?」


企業の多国籍化にともなう「国籍」問題を取り上げた。多国籍企業統計上の「国籍」の意義、多国籍企業にとっての「国籍」概念とその希薄化、課税権を行使する根拠としての「国籍」の重要性について、「企業と課税当局」「課税当局とタックス・ヘイブン」という対立軸を設けて概観した。また、多国籍企業と課税当局の間の「国籍」認識の相違、国際税務戦略とタックス・ヘイブン、多国籍企業の本社移転(コーポレート・インバージョン)などについても取り上げ、2009年4月のG20でも見られたように、厳しい経済状況の下で各国政府間の課税対象所得の争奪戦が生じている点を指摘した。これに対して、「従来の多国籍企業論との関係性」と、「この課題の位置付けの明確化」が必要な点が指摘された。


第4回研究会

  • 日時:2009年5月26日(火)14:00~16:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:「台湾の世界遺産登録申請政策―「和諧世界」の国内境界としての台湾―」

2005年、胡錦涛は国連総会で「和諧世界」を提唱し、同理論は外交スローガンにも応用された。他方で文化政策を重視する中国は、世界遺産政策を通じて民族間の調和と中華民族への統合を進めるが、台湾には世界遺産物件がない。これは「国連基準」から台湾を除外するとの同政府の政治判断であると論じた。同時に、台湾の行政院文化建設委員会が展開する世界遺産申請政策が、理念・制度の両面から内部破綻している点を論証した。 質疑応答では、「和諧」理論と世界遺産政策との関連が明瞭でないとの指摘の他、中国側の判断ではなく台湾を実行支配できていない現状や、世界遺産登録しても経済収益が見込めぬことが要因でないかとの可能性が提起された。


第3回研究会

  • 日時:2009年5月12日(火)13:00~16:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:宇都宮浩一(ICCS研究員)
  • テーマ:「フェア・トレードにおける移転価格」


貧困国・地域は一次産品の輸出国となっている場合が多いが、これと先進諸国・地域との貿易に関連して、フェア・トレード(公平貿易)という考え方が提示されている。フェア・トレードは、市場価格にプレミアを付加して一次産品生産者の実質所得を引き上げることで貧困の解決を図ろうとするものである。これについて、フェア・トレードの価格決定メカニズムが多国籍企業で多用されている「移転価格」と同様の仕組みではないかという指摘が報告者よりなされた。これに対して、フェア・トレードは、社会運動としての側面が強く、実態調査などは可能であろうが経済学的なアプローチを行うには難しい点が多いとの指摘がなされた。また、フェア・トレードの主体の一つである流通企業について、これを積極的に推進している企業への調査が有効ではないかという指摘があった。


第2回研究会

  • 日時:2009年4月28日(火)15:00~18:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:「『和諧』論の境界―国際政治学の視点から」

国連システムにおいて”development”という概念は、「開発」から「発展」へと展開・熟成された。その結果として国連開発計画は、1994年に「人間の安全保障」という開発理念を提起する。本報告では、この環境変化(入力)と中国政府による「和諧」論の政策決定(出力)との関連について、D.イーストンの政治システム論を応用することで検証を試みた。中国の改革開放路線を支えた「小康」から人間を中心とする「和諧」への論理展開は、「開発」から「発展」への変容を反映する。一方で、科学的発展観を謳う政治目標としての「和諧」論の脱科学性については、注意を要すとの指摘があった。つまり、「和諧」論の理論的・物理的境界は、科学に裏付けられるものでなく、政治判断に委ねられている。


第1回研究会

  • 日時:2009年4月21日(火)15:00~17:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:宇都宮浩一(ICCS研究員)
  • テーマ:「中国の経済成長をどうみるか」


報告者からは、現在の中国について、「現在の経済成長という概念は、多くの事象を外部に置き去りにしており問題が多い。GDPなどの統計数字を鵜呑みにするのではなく、文化や環境など多様な視点を取り入れて評価を行った場合、果たして経済成長しているといえるのか」、という提起がなされた。この問題提起に対して、「統計はあくまで現実の一部をある種の考え方で切り取ったものであり、そのことを弁えて議論する必要がある。現実には、自然や人間の活動、心などを全て数量化することは、観察・評価の問題から不可能である。」との指摘があった。また、中国の経済成長の今後については、「中国は技術発展しているが余剰労働力も生み出す。この吸収が不十分であると、持続可能な経済成長は難しい。」という指摘もなされた。



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