ICCS 国際中国学研究センター

研究活動

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第24回研究会

  • 日時:2011年1月21日(水)13:00~14:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:佐藤敦信(ICCS研究員)
  • テーマ:穂木による果実輸出から現地生産への転換の可能性


 日本産農産物の輸出は攻めの農政転換以降、増加してきたものの近年は歯止めがかかりつつある。これは、日本産農産物は他国産と比較して高価格であるという特徴を有しているためである。その一方で、輸出先の高所得者層では高品質農産物の需要が依然として高まっていることから輸出以外の供給方策について検討することは重要であると言える。本報告では、供給方策として生産財を輸出し輸出先の生産者によって生産・販売する方策を検討した。
 現在、日本が輸出している生産財の1つとして穂木が挙げられる。穂木の輸出先は概ね台湾に限定されている。そのため日本の生産者にとっては、輸出先が果実よりさらに限定される反面、①輸出に伴う作業が果実生産に付随したものであること、②果実輸出の副収入源になること、③国内梨生産者の有志による台湾の梨生産者への生産援助の側面を持つといった意義を持つ。さらに、台湾では日本の穂木によって生産された梨は販売チャネルが広く、日本産輸入梨よりも安価である。このことから、台湾における穂木の需要は今後も現在の規模で維持されると推測される。
 本報告をめぐって、台湾における梨の消費動向や、輸出における果実と穂木の経済的利点の比較に関する質問が提示された。


第23回研究会

  • 日時:2010年12月1日(水)12:00~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:平野孝治(ICCS研究員)
  • テーマ:中国の対外宣伝工作の現状と分析-中国中央テレビを事例に-


 近年、中国政府はマスメディアによる対外宣伝工作を強化している。特に中国の国営テレビ局である中国中央テレビは、2000年以降急速に発展している。外交の分野でソフトパワーの役割が注目される中で、中国政府は西側メディアの国際世論への影響力に対抗するために、中国中央テレビの英語放送のコンテンツを充実させようと改革に乗り出した。また、CNNやBBC等の西側メディアの情報量に追いつくために、取材網の拡大も行っている。今回は、中国政府の対外宣伝工作の政策内容と中国中央テレビの国際放送戦略の現状について報告を行った。
 中国政府は、「走出去」政策を提唱しているが、マスメディアに対しても「走出去」を加速させようとしている。中国政府は中国衛星電視長城平台(長城平台)を設置し、中国中央テレビだけではなく、省レベルのテレビ局のチャンネルもまとめて輸出することに成功している。その中でも、中国中央テレビの英語放送の輸出は、中国の対外宣伝工作の重要な政策道具と言える。しかし、中国中央テレビの英語放送が西側諸国の視聴者に受け入れられるかどうかは疑問視されている。このような中国の対外宣伝工作の実態と中国中央テレビの国際放送の現状について報告者から紹介された。


第22回研究会

  • 日時:2010年11月17日(水)12:00~13:20
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:中国の国連改革政策


 1997年にアナン国連事務総長(当時)が報告書「国連の再生:改革に向けたプログラム」のなかで指摘したとおり、「国連は52年間の歴史で行政効率の向上にもっとも注力してきた。しかし、改革がもっとも遅れたのがこの点である」。国連創設は、「『すべての国に共通ではない』共通利益」の追求の結果であり、その創設後も加盟国をはじめ諸機関など国連システムに関与する各アクターが、自身にとって有益な機構改革を訴えてきた。
 本報告は、国連改革をめぐる議論の経緯を整理し、特に日本と中国の国連改革論の特徴を検証した。日本は1956年に国連加盟を果たして以降、国連中心主義を外交活動の柱としてきた。しかし同国政府は、国連改革を安保理改革に一元化した1993年を国連改革の元年と位置付ける。一方の中国は、2000年代になって初めて国連改革論を提示し、途上国の権限拡大を訴える。しかしいつ国連改革が始まったのか、明言していない。
 途上国の権限保護を訴える中国の姿勢は、国連の原加盟国である「中華民国」が国連創設過程で堅持した提案と重複するもので、国連改革論から国家継承が再確認される。同時に国連創設以来、なお実現されない改革要求からも「国連の歴史は、改革議論の歴史だった」との指摘が裏付けられる。


第21回研究会

  • 日時:2010年10月20日(水)12:00~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:佐藤敦信(ICCS研究員)
  • テーマ:中国における違法食品輸出防止策施行後の摘発状況と課題


 中国においても輸出入食品に対する安全性保持の観点から、一定の検疫基準が設けられている。しかし、近年、中国における輸出検疫検査および輸出先である日本や米国における輸入検疫検査で、違法に輸出された中国産食品が摘発されるケースが多発している。そこで、国家質量監督検査検疫総局が施行した違法食品輸出防止策の内容と、同局の違反企業に関する資料をもとに、違法食品輸出防止策施行に伴う生産輸出企業の摘発状況と課題について報告した。
 国家質量監督検査検疫総局が公表している違反企業リストをみると、依然として輸出検疫検査を受けていない企業が大部分を占めている。違法食品輸出防止策は全国一律の内容として指導され、違法食品輸出防止の徹底化を図ることを目的としているにもかかわらず、未だ生産輸出企業への徹底化が図られている状況とは言えない。中国産食品の輸出量は増加傾向にあり輸出先も多角化している。このことから、生産輸出企業への徹底化が図られていない事態は日本や米国だけではなく、より多くの輸出先へ波及することが推測される。本報告では、中国の輸出検疫検査方法およびその信頼性、米国や日本などの輸出先における輸入検疫検査の差異などに関する質問が提示された。


第20回研究会

  • 日時:2010年10月13日(水)11:10~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:平野孝治(ICCS研究員)
  • テーマ:中国世論と西側諸国の対立構造について


 これまでの反日・反米の中国世論は、日中間あるいは米中間という二国間の対立が起源となっていたが、2008年のチベット騒乱では、中国対西側諸国、中国世論対西側諸国の世論という対立構造が見られた。特に中国国内では、西側メディアの報道を批判する言説が多くみられ、中国世論の西側メディア不信が鮮明に見られた。今回の研究会では、2008年のチベット騒乱を事例に、中国と西側諸国の対立過程と、中国国内で発表された西側メディア批判の内容、そして中国の国際世論を意識した対外宣伝の実態について報告を行った。
 中国では西側メディアを批判する文章がメディアに数多く掲載された。西側メディアの情報が国際社会で強力な影響を持ち得ている状況に危機感を懐いている中国政府は中国中央テレビの国際放送を強化し、更にはインターネットを利用した対外宣伝活動を積極的に行っている。しかし、西側諸国の一般市民がインターネットを通じて中国中央テレビのコンテンツを閲覧し、中国の主張を受け入れる可能性は高くないと思われる。中国の対外宣伝にはいくつかの問題点も存在する。このような中国の対外宣伝の実態と西側メディアの中国批判の構造について報告者から紹介された。


第19回研究会

  • 日時:2010年9月29日(水)11:10~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:国連開発計画の開発理念―国際政治を背景として


 国連システムにおける中国像は、自己規定する「途上国」と安保理常任理事国である同国に対する他者認識である「中心的パワー」との二面性がある。この二面性は、同システムの経済社会分野にも投影される。本報告では、これまで考察してきた国連経済社会分野における“development”の理念転換を背景として、1989年から2005年の間に、中国代表が国連総会一般討論演説において行った「開発/発展」に関する発言を分析することで、同分野における中国像の二面性を検証する。
 グローバル化のなかで“development”理念は単一化するかにみえるが、上記分析に基づけば中国の「開発/発展」は、世界潮流と必ずしも符合するものでない。それは、「発展」という言説のもつ二面的意義に集約されると同時に、国際社会における「中国」の歴史的文脈を考慮すべき中国像の二面性に起因する独自理念である。本報告をめぐって、国連機能の今日的意義を問う質問などが提示された。


第18回研究会

  • 日時:2010年6月29日(火)11:10~12:30
  • 場所:435研究室
  • 報告:成田拓未(ICCS研究員)
  • テーマ:中国における農民専業合作社法の制定と果実産地商人の合作社化


 中国における農産物産地商人に対する農民専業合作社法(合作社法)のインパクト、具体的には産地商人の農民専業合作社(合作社)への変容の実態について、山東省の事例をもとに報告した。
 中国では農協に相当する組織が未成熟なまま市場経済化が進展し、青果物に対する市場の要求は質を中心により一層高まってきている。その中では、商人が品質の統一を軸とする産地形成や農民組織化の中核を担っている事例が見られる。本報告が取り上げるりんご産地商人・青島市D果菜有限公司もその一事例であり、同公司を中心に協会を設立して農民を糾合し、協会を通じた技術の普及、農業資材の共同購入、りんごの共同販売に取り組んできた。特筆すべきは、同協会を中心に合作社を設立するにあたって同公司は清算され、その業務や資産がそのまま合作社に引き継がれたことである。すなわち、商人が合作社へと変容したのである。
 合作社法にもとづいて設立された合作社は、少なくとも制度上は協同組合的性格を有している。その中で、かつての商人を核とする合作社が協同組合としての内実をどれだけ獲得することができるのか。中国農村における農民組織の多くは、商人を核として設立されていることから、この論点は、今後の中国の協同組合の発展を展望する際重要な位置を占めるものである。本報告で取り上げた事例合作社は、利用高配当や比較的民主的な運営がなされており、商人を核とする合作社が、協同組合的性格を持ちうることを実証している。
 議論では、合作社に関わる政策展開が、共産党による農村統治構造の再構築にどのように関わってくるのか等、政治学などの観点からも合作社問題が論じられた。


第17回研究会

  • 日時:2010年6月15日(火)11:10~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:平野孝治(ICCS研究員)
  • テーマ:中華人民共和国建国初期の宣伝工作


 中国のイデオロギー領域全般を管轄している中国共産党中央宣伝部。中央宣伝部の宣伝工作は中国の政権維持に貢献しており、現在の中央宣伝部の職務形態は建国初期に形成されたと思われる。本報告では、建国初期から反右派闘争までの間に行なわれた宣伝工作会議の内容について検証し、建国初期の中央宣伝部の工作内容から、現在の中央宣伝部の性質について考える作業を行なった。
 先行研究では、中央宣伝部の工作内容についてマスメディアとの関連で論じられることが多い。しかし、実際には中央宣伝部の宣伝工作は、地方行政や文化、教育といった幅広い領域にまで及んでいるが、これらの領域に関連した中央宣伝部の工作内容に関する研究はほとんど行なわれていない。特に、建国初期には、政策を伝達する宣伝網の建設が提示され、また地方政府の幹部を育成することが中央宣伝部の宣伝工作会議で議題として挙げられた。このような建国初期の中央宣伝部の工作内容について報告者から紹介された。


第16回研究会

  • 日時:2010年6月1日(火)11:10~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:加治宏基(ICCS研究員)
  • テーマ:国連開発計画の開発理念――国際政治を背景として


 南北問題の可視化と冷戦体制の雪解けが、国際政治の変動力学を活性化し、1960年代に第一次「国連開発の10年」が展開される。その過程で開発至上主義にとらわれたマクロ数値の限界が露呈する。「南」への支持は先進国の学術界、財政界の一部からも見受けられ、1970年代には成長の持続可能性をめぐる省察を経て、国連全体として“development”の理念転換を受容する。同時期、「人間中心の開発」を提唱した国連開発計画(UNDP)は、活動地域での土着化と国連システムにおける政治力醸成に努めた。
 こうした経緯をふまえ、1990年代にはUNDPによって開発ディスコース「人間開発」が本格生成され、「人間の安全保障」も提起された。2000年代には、国連ミレニアム開発目標が総会決議されたが、一連の新自由主義へのアンチテーゼ的開発スキームは、UNDPによる権限拡充政策の具現化との側面をもっていた。国連議事録などにより国際機関の政治性を検証した本報告をめぐり、国連の信頼性を問う質疑が提示された。そこで、国際機構の正当性をめぐり、その機能論をふまえた議論となった。


第15回研究会

  • 日時:2010年4月27日(火)11:10~12:30
  • 場所:435研究室
  • 報告:成田拓未(ICCS研究員)
  • テーマ:海南省におけるバナナ農業と農民専業合作社


 中国で設立の進む農民専業合作社の現状について、海南省の事例調査をもとに報告した。海南省では、1990年代以降、営利企業による大規模バナナ経営(主として荒地開墾)が展開した。そのことを通じて、海南省は中国を代表するバナナ産地へと成長するのみならず、バナナ企業によるバナナ生産技術の向上、その立地周辺地域の活性化(バナナ企業が支払う地代収入による)の可能性の創出、バナナ生産コストの削減などの効果が上がっているとされている。
 同時に、バナナ企業展開の限界として、収益性悪化による撤退の可能性を常にはらんでいること、バナナ企業が支払う賃金はもっぱら出稼ぎ労働者の手に渡っていること(地元出身者の労働者はほとんどいない)などが指摘されている。その中で、2006年設立、2008年農民専業合作社法に基づく登記を行ったFバナナ合作社の事例を取り上げ、その実態を明らかにした。F合作社は、バナナ企業を中心とする企業経営者20名の出資社員と、農民である非出資社員500名余りの組織である。
 技術の向上、資材の共同購入、販売先の確保など、少ないながら成果を上げている。しかしながら、農民自身の内発的な動機による設立ではないことから、農民による合作社の利用は安定性を欠いている。まとめとして、農民の内発的な動機に基づく合作社の運営へと転換していくことができるか否かが、中国農民合作社の発展の課題になると指摘した。
 議論では、営利企業と農民のいずれが農産物生産を担うかによって、地代分のコストの差が発生するというところから、合作社(農業協同組合)の根本的な存在意義の検討が求められるのではないか等、協同組合論をめぐる根源的な問題提起がなされた。


第14回研究会

  • 日時:2010年4月13日(火)11:10~13:00
  • 場所:435研究室
  • 報告:平野孝治(ICCS研究員)
  • テーマ:「共産党機関紙の政治的役割と読者意識」


 共産党機関紙はかつて「党の喉と舌」と形容されるように、宣伝機関としての役割が重視された。しかし、市場経済の発達により、宣伝機関としての機関紙は、読者を意識した改革を迫られるようになった。共産党機関紙が政治的役割を発揮するためにも、読者を獲得しなければならないが、旧来の教義的な内容中心の記事構成では、共産党機関紙は読者を獲得できないだけではなく、存続すら危うい状況になってしまう。そこで、共産党機関紙は、「改版」を実施し、コラムを充実させたり、評論を増やしたりという工夫をし、さらには見易さ等も重視し始めた。しかし、中国のジャーナリズム論が示す「党性の原則」を巡る概念は、現在の機関紙にも備わっている。機関紙である以上、共産党の政策方針から逸れた議論を行うことは難しいのである。しかし、市民は、都市報や晩報等の大衆性の強い新聞を好む。共産党機関紙は、政治宣伝という本来の役割と読者を意識した改革との間でズレが生じ始めている。このような機関紙の大衆化と政治宣伝の現状について、報告者から紹介された。



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