2020年4月1日、深串徹ICCS研究員、黄潔ICCS研究員が着任しました。
■深串 徹 研究員
ICCS研究員の深串徹と申します。台湾の政治史・文化史を専門にしています。現在研究テーマとしているのは、第二次世界大戦後の台湾における歴史認識の変遷です。特に、1949年以降に中国大陸から台湾に渡り、権威主義体制時代に中華民国政府に対する批判勢力となっていた胡適、雷震、殷海光、李敖などのリベラルな知識人の歴史認識に関心を持っています。従来、国民党政権の公定史観とそれに対する本省人知識人の異議申し立てのせめぎ合いとしてとらえられがちであった台湾における歴史認識をめぐる力学を、それらいずれの勢力とも距離を置いていた人々の歴史認識の実像を明らかにすることで、より総合的に理解することが当面の目標です。このような研究を通じて、20世紀の中国人知識人が、リベラリズムとナショナリズムという二つの政治思想の両立をどのように図って来たかという問題についても検討して行きたいと考えています。
■黄 潔 研究員
ICCS研究員の黄潔と申します。私はこれまで、中国華南地方の少数民族を対象としたフィールドワークに基づく研究を続けてきました。タイ系民族の一つトン族の人々が多く暮らす広西チワン族自治区を中心に調査を実施し、彼ら独自の親族構造、村落統合、通婚、祭祀、リーダーシップなどの様相について考察・検討してきました。中国少数民族研究のフィールドにおいては従来、漢語を用いた調査が当然実施され、漢語に翻訳された諸概念に基づくモデル化を無批判に行ってきました。しかし実際の調査によると、文字を持たないトン族の人々は漢族の宗族や婚姻規則との不一致を解消するために、自民族固有の親族規範に基づきながらも漢語を表記言語として、漢文化に接近していることが明らかになりました。このような少数民族の伝統的な社会統合のあり方とその現代的意義を様々な事例分析によって解明することをめざしています。最近では、1980年代後半頃に形成された、地域の高齢者によって運営される「老人協会」という自主的な民間組織を研究対象としています。また、元々、私の専門は中国民俗学でしたが、留学後に日本の東南アジア研究を学んだことがきっかけで視野が広がりました。特にタイ系民族に広くみられる土着信仰と外来宗教の習合現象に対して興味が湧き、中国南部のほか、タイでの調査研究にも着手しています。そして、自国研究の民族誌を日本語の読者向けに書き、その延長で日本国内の民俗調査も行なっています。