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公開レクチャー:イメージング・アジア ―〈リバランス〉再調整期のアジア協同体を想起する—(1/6-1/7)

 愛知大学国際中国学研究センター政治外交的アプローチ班では、以下の通り、愛知大学国際コミュニケーション学部アジア協同体論講座、同国際コミュニケーション学会との共催により、公開レクチャーを開催いたします。 ---

イメージング・アジア
-〈リバランス〉再調整期のアジア協同体を想起する-


日時:2015年1月6日(火)10:45~12:15/13:00~14:30
   2015年1月7日(水)14:45~18:00
会場:愛知大学名古屋校舎
 ◇1月6日(火)
 10:45~12:15/13:00~14:30:講義棟8階L805教室
 ◇1月7日(水)
 14:45~18:00:講義棟7階L706教室

共催:
愛知大学国際コミュニケーション学部アジア協同体論講座、同国際コミュニケーション学会、同国際中国学研究センター政治外交班
備考:参加無料・申込不要

開催趣旨:

 2012年、米国オバマ政権は「アジア回帰」政策(のちに「アジア・リバランス(再均衡)」政策と改名)を発表しました。成長著しいアジア太平洋地域に地政学的戦略の軸足を置くことを示すためであるとされています。この政策は発表当時から、さまざまな称賛・非難の声と解釈、反応を引き起こしました。しかし、この発表から2年が経過し、その間かつて軸足を置いた中東におけるアメリカの対応も二転三転し、オバマ政権内では最近、国務長官および国家安全保障担当大統領補佐官などばかりか国防長官までもが交代するといった迷走を続けています。また、エジプトやシリア、イラン、クリミア半島、ウクライナなど、世界の他の地域に米国の注意を向ける必要があることから、この「アジア・リバランス(再均衡)」政策はすでに行き詰まっているという声も一部にあります。かといって、軸足をいくつも抱えて迷走すれば、「帝国」の自壊がさらに早まることは歴史のよく語るところでもあります。
 いわば、「アジア・リバランスのリバランス」という奇妙に展開する世界情勢のなかで、〈アジア〉というコンセプトがどのようなイメージ喚起機能を果たしていくのか、あらためて問われているといえましょう。
 現在、〈アジア〉再定義の要請が高まっている要因の第一には、21世紀初頭において顕著な経済成長を遂げる中国の存在があります。それは「中国はアジアなのか」という〈中国〉の定義をめぐる問題とも相関しています。〈アジア〉が強調されれば〈中国〉の存在は希薄化され、その逆に〈中国〉が強調されれば〈アジア〉の存在は周辺化されるといった方程式の中に閉じ込められたままであるともいえましょう。
 厄介であるのは、両者ともに曖昧な定義によるイメージとして浮遊していることです。これは「アメリカはアジアなのか」という問いともパラレルな関係を構築し、事態をよりいっそう複雑なものにしています。さらに言えば、リバランスの起点にもなっていた「中東」は〈アジア〉なのかという問題すら惹起するのだといえましょう。マレーシア航空機の墜落したウクライナ問題からISISや東アジアの日中韓関係の危機などとの連動が論点となるのも、まさにそうした複雑さゆえであるともいえましょう。
 EUのようにすでにある種のパラメーターによって存在を示すことのできる〈地域〉とは異なり、〈アジア〉はそれを問題にしようとする発話主体の「意図」によって伸縮する概念です。
 たとえば、「それぞれの民族国家の政治的境界を越え、一つの想像上の政治空間を構築し、対内的には国家中心主義を解体し、対外的には欧米の覇権に抵抗する」、といった「意図」によってそれが発話されようとする時には、そのような意義あるものとして提示されるでしょう。「アジアからの思考」「アジアからの世界史像の構築」等々という発話意図の多くは、オリエンタリズム的思考から逃れてポストコロニアルなイメージを〈アジア〉という表象に与えようとすることにあります。
 しかし、そうした「意図」とは異なる方向から、そもそもアジアを「一つの歴史世界」として扱うことは可能なのかと問われれば、たちまちさまざまな反証に出会うことになります。
 〈アジア〉再定義の動向はそうした「意図」のありようによりさまざまな可能性をもつことになり、結局〈アジア〉は「定義」できなくなります。しかし、にもかかわらず、現在〈アジア〉は何かまとまった〈地域〉としてイメージング可能な諸要素を備えているようです。それは経済社会のネットワークの実態がそれを裏づけているからであり、メディアの相互浸潤によって一定の情報の拡散が行われているからでしょう。もっとも、情報の量的拡大が「アジア人アイデンティティ」を構築するほどの質的変化をもたらしているわけではないのかもしれません。
 アメリカの対外政策における「リバランスのリバランス」が、必ずしも過去の「中東」問題の処理が終わっていないといった状況を単純に指しているのではないことは明らかです。そこに中国はじめロシアなどをも含めた新たな情勢の質的転換の徴候を見出す必要があります。今回のレクチャーでは、そうした諸点をめぐって、総合的分析を可能にするブレーンストーミングを行います。 (コーディネーター:鈴木規夫)

【パネリスト】
コーディネーター:鈴木規夫/愛知大学教授、板垣雄三/東京大学名誉教授、武者小路公秀/国連大学元副学長、グレン・フック/シェフィールド大学教授、小倉利丸/富山大学教授、玉本偉/世界政策研究所主任研究員、臧志軍/復旦大学教授、長澤榮治/東京大学教授、バラック・クシュナー/ケンブリッジ大学准教授、加々美光行/愛知大学名誉教授、他NIHU-ICCS政治外交班

【プログラム内容】

◆1月6日(火)
<10:45~12:15公開レクチャーα>
■開催趣旨説明 鈴木規夫
■レクチャーⅠ リバランス〉再調整期のアジア協同体―土台的視座から
小倉利丸(富山大学教授)

休憩 12:15~13:00

<13:00~14:30公開レクチャーβ>
■レクチャーⅡ 〈リバランス〉再調整期のアジア協同体―欧米中心主義の断末魔を聴く
板垣雄三(東京大学名誉教授)
■レクチャーⅢ 〈リバランス〉再調整期のアジア協同体―カイロ的視座から
長澤榮治(東京大学教授)

◆1月7日(水)
<14:45~18:00公開レクチャーγ>
■レクチャーⅣ 〈リバランス〉再調整期のアジア協同体―歴史的視座から
バラック・クシュナー(ケンブリッジ大学准教授)
■レクチャーⅤ 〈リバランス〉再調整期のアジア協同体―平和構築的視座から
グレン・フック(シェフィールド大学教授)

休憩 16:15〜16:30

■レクチャーⅥ 〈リバランス〉再調整期のアジア協同体―上海的視座から
臧 志軍(復旦大学教授)
■コメント
板垣雄三(東京大学名誉教授)
加々美光行(愛知大学名誉教授)
武者小路公秀(国連大学元副学長)
玉本 偉(世界政策研究所主任研究員)

■質疑応答

終了

懇親会 18:30〜21:00
                  --- ■お問合せ先:
愛知大学国際中国学研究センター(ICCS)
E-MAIL:iccs-sympo(AT)ml.aichi-u.ac.jp
※上記メールアドレスの(AT)は@に置き換えてください  


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ICCS(International Center for Chinese Studies)について

文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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