お知らせ

第9回(2011年度)国際ワークショップ「グローバル社会のなかの中国」を開催しました

国際中国学研究センター(ICCS)は、2011年12月11日、本学車道校舎において第9回(2011年度)国際ワークショップ「グローバル社会のなかの中国」を開催しました。本ワークショップには約200名の来場者があり、国内外の中国研究者により、政治外交、経済、文化・社会、環境の視点から近年急速に国際的影響力が拡大している中国に関する研究報告とディスカッションが行われました。



○佐藤元彦学長開会挨拶


佐藤元彦学長


○高橋五郎(愛知大学国際中国学研究センター・所長)
 高橋五郎ICCS所長より、「グローバル社会のなかの中国」のテーマで、グローバル社会において中国研究者に課せられた課題について触れた上で、本ワークショップの趣旨説明が行われました。


高橋五郎ICCS所長


○金観濤(台湾政治大学中文系・講座教授)
 「百年の視野:儒学と東アジア社会の国際関係」というテーマのもと、金観濤氏より儒学の天下観に基づく東アジアの国家間関係の歴史的過程を踏まえた考察について報告がありました。


○呉暁波(浙江大学管理学院・常務副院長)
 呉暁波氏からは「なぜ中国企業は先進国に直接投資するのか?」のテーマで、東アジアの工業化の中での中国の位置づけ、製造業を中心とした経済成長、民間企業の躍進とその重要性などについて事例企業の紹介も含めて報告がありました。


金観濤教授

呉暁波教授


○張士閃(山東大学文史哲研究院民俗学研究所・所長)
 張士閃氏からは「海に依存した生活の憂いとその解決―ある山東漁村に対する考察」というテーマで、山東省の漁村における現地調査の結果に基づき、グローバル化がもたらす村落社会への影響に関する報告がありました。


○朴鐘根(ソウル大学工学部・教授)
 「韓国の電力事情と将来展望」というテーマで、朴鐘根氏より韓国におけるエネルギー産業とりわけ再生可能エネルギーへの注力の現状、スマートグリッドの発展過程などについて報告がありました。


張士閃教授

朴鐘根教授





政治外交分科会

○政治外交分科会
座長:鈴木規夫(愛知大学)
報告者:矢吹晋(横浜市立大学名誉教授)
    加々美光行(愛知大学)
    宋進(華東師範大学)
    湯忠鋼(華僑大学)
    席偉建(天津行政学院)
    鈴木規夫(愛知大学)


 政治外交分科会では、「東アジアの両世紀―国際中国学への構想力―」という全体テーマのもと、6つの報告が行われました。まず前半は、現代中国における政治改革の困難について、官僚資本主義の存在(矢吹報告)、そして従来の開発主義からの脱却・転換の遅れ(加々美報告)が指摘されました。一方、そうした困難は西欧社会も経験してきたものであり、中国だけに存在するものではないという見解(宋報告)も提起されました。後半は、金観濤氏の基調報告を受けた形で、東アジア各国のナショナリズム、「天下観」の問題が、牟宗三による政治と統治に対する解釈(湯報告)、司馬遼太郎と魯迅のナショナリズムに対する見解の相違(席報告)、「ヨーロッパ中心主義」幻想の切断と新たな東アジア発の秩序構想(鈴木報告)といった角度から論じられました。


経済分科会

○経済分科会
座長:川井伸一(愛知大学)
報告者:安達満靖(愛知大学)
    古澤賢治(愛知大学)
    高橋五郎(愛知大学)
    中川涼司(立命館大学)
    川井伸一(愛知大学)


 経済分科会においては、「グローバル化する中国経済」というテーマのもと、上記5名の報告者から、中国経済研究における経済思想、輸出指向工業化による経済成長の過程、アフリカやロシアに進出する中国農業、対日進出におけるレノボとファーウェイの比較、中国製造業企業の海外進出における類型についてそれぞれ報告されました。また、各報告では、基調報告を行った呉暁波氏や一般参加者も交えて、日本と比較した中国の経済発展段階や、今後の中国における経済発展の方向性、中国における企業の財務情報の入手とその解釈などに関する活発な議論が展開されました。


文化・社会分科会

○文化・社会分科会
座長:馬場毅(愛知大学)
報告者:周星(愛知大学)
    楊韜(名古屋大学)
    劉正強(上海社会科学院)
    武小燕(名古屋大学)
    陳紅娟(華東師範大学)
    山口哲由(愛知大学)


 文化・社会分科会では、「グローバル化における中国の文化と社会―過去と現在―」というテーマのもと、上記6名の報告者によって、中国社会における婚姻や服飾、国語教育、生産活動にみられる伝統の改変やその背景にある社会状況の変化との関連を考察した事例研究とともに、それらの変化を分析するうえでの視点や今後の展望を提示した理論に関する報告が行われました。いずれの発表においても、近年の中国における急激な経済発展とそれを取り込んだうえでどのように文化や社会を形作っていくのか、そのせめぎ合いの状況が解りやすく説明されており、一般参加者も交えた活発な議論が行われました。


環境分科会

○環境分科会
座長:李春利(愛知大学)
報告者:栗原史郎(一橋大学)
    大澤正治(愛知大学)
    李春利(愛知大学)
    田島俊雄(東京大学・ペーパー参加)


 環境分科会は、「電力の未来と東アジア」を全体のテーマとして、3つの報告が行われ、最後には各発表者、そして基調報告を行った朴鐘根氏を交えて、「福島第一原発事故がアジアおよび世界のエネルギー政策に与えた影響をどうみるか」という議題をめぐってオープン・ディスカッションが行われました。福島原発事故を受け、中国の原子力発電産業が今後どういった方向に舵を取っていくか、東アジア各国がエネルギーをめぐってどういった分野で連携すべきなのか、将来の電力システムにおいてスマートグリッドをいかに組み込んでいくべきか、といった点について具体的な提言がなされました。




総括セッション

○総括セッション
座長:高橋五郎(愛知大学)


 総括セッションでは、各セッションで提起された問題と討論内容が総括され、それに基づいて総合的な議論が行われました。様々な論点からの議論が行われましたが、グローバリゼーションの一側面として価値の多角化の重要性が複数のパネリストから指摘されました。そういった多角的な研究者を擁し、日中以外の近隣諸国とも協同しながら研究・教育を行っているICCSに対して、いっそうの充実を図ることを期待する声が多数寄せられました。さらには一般参加者の方も交え、2011年3月に発生した大震災と関連してグローバリゼーションと技術の関係性などの討論が行われました。


○閉会挨拶


閉会挨拶


○記念撮影


記念撮影


 ワークショップの成果は、電子ジャーナル「ICCS現代中国学ジャーナル」に掲載される予定です。


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ICCS(International Center for Chinese Studies)について

文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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