2022年度ICCS訪問教授の賀平氏(復旦大学日本研究センター教授)と熊李力氏(対外経済貿易大学教授)が2022年12月17日に開催されたICCS政治・外交研究会主催公開研究会にて研究報告をされました。
まず賀平教授より「中国における国際日本研究: これまでの展開と展望」と題する報告が中国語でなされました。報告では、まず、国際日本研究の定義・範疇を検討し策定しました。次に、1.国際日本研究の中国語訳2.中国における国際日本研究機構の設置3.ネットワークの構築:国際交流と合作、といった3点から、国際日本研究が中国国内でどのように展開してきたのかを解明しました。最後に、「国際化」の実態を精査するとともに、中国における国際日本研究の今後の展望を示されました。加治教授から、日本研究に関する英語研究書は欧米バイアスが埋め込まれているが、これを中国学術界はどう意識・処理するか、なぜ中国の日本研究では社会変動要因である政治経済分野ではなく、社会文化、歴史に多いのかなど質問が提起され、報告者からの応答がありました。
次に、熊李力先生より「バイデン政権の対中国政策とその行方」との題で中国語による報告がなされました。報告では、バイデン政権対中政策の基本的な考え方を概観した上で、トランプ政権の対中政策と比較しながら、価値観外交の復興、政治・軍事同盟から経済技術同盟への移行について検証し、また展望として米中間に競争と協力の共存関係があるとの結論が提示されました。李春利教授の討論では、気候変動は米中対立を激化させるか、あるいは米中対話への突破口となるか、50年前の米中国交樹立は現在の米中関係に参考になるか、台湾の半導体を例としてアメリカの同盟国は政治・外交上アメリカを選択すべきか、それとも経済メリットを重視して中国を選択すべくのかといった質問があり、報告者から応答がなされました。
今回の公開研究会はオンライン(ZOOM)での開催となりましたが、多くの方々にご参加いただきました。
2022年8月1日、金京ICCS研究員が着任しました。 ---
■金 京 研究員
ICCS研究員の金京と申します。アイスランドにおける中国系移民コミュニティと地域社会の変容について研究しています。私の研究では、今まで殆ど注目されていなかったアイスランドおける小規模の中国系移民集団に注目し、彼らの移住の歴史、組織の構成、経済活動の形態、ネットワークの変遷などを通じて、コミュニティの全体像を明らかにしてきした。現在は、新型コロナの流行により人の移動が制限されている新たな社会環境の中で、アイスランドにおける中国系移民コミュニティと地域社会が、特に観光業の変動からの影響を受けることによってどのように変容していくのかについて、現地調査・参与観察に基づく量的・質的調査にてデータを収集し、分析を行なっております。
アイスランドは今まで観光業において著しい発展を遂げてきましたが、新型コロナ以降中国からの訪問者数の減少が顕著となり、観光をめぐる両国の間の人的交流に新たな変化をもたらしました。2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行によって、かつて簡単に国境を超えて行われてきた旅行が現在かなり難しくなっており、観光業を基幹産業として発展してきた国々にとっては、観光市場の低迷は地域経済及び地域住民の生活全般に大きな影響を与えています。一方、中国人観光客は中国の経済成長とともに、観光市場において重要な参加者となってきましたが、今日では、各国で中国人観光客の姿が見えにくくなっています。そこで、本課題では、コロナ禍において中国の経済力がどのように現地の中国系移民コミュニティと地域社会の変容に影響をもたらしているのかに注目し、その動きを提示します。