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第48回研究会

第一報告

  • 張 小月(ICCS RA):漢服の美学について——和服との比較を通じて

第二報告

  • 曽根 英秋(ICCS RA):中国におけるトヨタ経営の源流 西川秋次

M308教室
報告1:張 小月(ICCS RA)
テーマ:漢服の美学について——和服との比較を通じて

 本報告は日本の和服との比較考察を通じて、漢服運動における漢服の美を構築する時にあった問題点を解明しようとするものである。
 漢服運動の実践者は漢服が世の中でもっとも美しい衣装だと思っているが、社会では、漢服が非常に醜い、おかしい、さらに漢服を着る人たちが「群魔乱舞」などのように嘲笑、批判される。しかも、漢服が好きな人の中にも、漢服が客観的に美観性を欠如している思う人もいる。美に関する基準が主観的な感覚であるから、簡単に「美」と「醜」を判断できないと思うが、漢服の美が現代中国主流審美にあまり受けられないことは確かに事実である。漢服美学が話題にのぼる時、和服をいい例として比較することが多いと考える。本文は「美学」の理論に基づき、また、和服との比較を通じて、なぜ漢服の美が現代中国主流審美にあまり受け入れられないのか、どのように改善すればよいのかという問題を解明したいと考える。
  報告後、周星先生から「美学」に関する論理的な部分がもっと深めにすれば、説得力が上がるようになる上で非常に重要な助言をいただいた。それとともに、「醜学」という「美学」の反対面からの研究可能性など今後の研究に大変重要なご指導を受けていただきました。



報告2:曽根 英秋(ICCS RA)
テーマ:中国におけるトヨタ経営の源流 西川秋次


 トヨタの中国事業展開は戦前から、上海の豊田紡織廠、豊田機械製造廠、華中豊田自動車、天津の北支自動車工業等が進出しており、中国における経営管理の方法については経験を積んできており、「トヨタの中国進出における経営行動の戦前と戦後の連続性」について、『愛知論叢105号』で「連続性が見られる」と分析結果を報告した。
 しかし、戦前の中国におけるトヨタの経営管理をどのような思想背景で、誰が展開したかの分析が不十分であり、より一層の深堀を試みる。そこで、西川秋次という大番頭に着目し、「中国における創成期のトヨタ式経営は西川秋次の実践躬行により建立した」という仮説を立て、トヨタ式経営管理の源流について、評価を試みる。トヨタの中国合弁事業の源流を分析することにより、日系企業の中国事業展開時の参考となることを期待するものである。
 本報告は主に、「トヨタ式経営とはどのようなものか」「戦前の中国における豊田進出事業の歴史」「戦前の中国における西川秋次の経営」「豊田紡織廠の労働運動からトヨタ式経営の分析」「豊田佐吉の思想の現在への継承」という課題で報告した。
 結果としては、1919年豊田佐吉は、訪米中に高峰博士から教わった民間外交を中国で実践したいという思いと、自動織機、環状織機完成のための資金調達を目的に、西川秋次を伴い半永住の決意で上海に渡り、自ら発明した織機で紡織業を興すための準備に取り掛かかり、佐吉の精神によるトヨタ式の経営が実践され、仮説は正しかったと筆者は考える。
 ①.佐吉と西川は一緒に半永住のつもりで上海へ赴任し、苦労をともに共有しており、西川は佐吉精神の経営(すなわち「豊田綱領」)を実践躬行した。
 ②.西川は、佐吉から経営を任され、1921年の豊田紡織廠設立から、1945年の会社消滅までの約30年の長期にわたり、上海に駐在し、佐吉の理想とする経営に努めた。
 ③.西川は、主要各社の役員を兼務し、会社設立から消滅までの長期間にわたり中国駐在役員のトップを歴任しトヨタ式経営を展開している。
 ④.1945年日本敗戦後も、佐吉の理想とする日本の紡織技術を中国へ移転することにより中国へ奉仕するという佐吉精神を実践するために中国に留まり、中国の戦後復興に尽力している。
 そして、豊田佐吉の精神である、「顧客第一主義」、「現地現物主義」、「自働化」、「物づくりは人づくり」等の考え方は、「豊田綱領」として残され、現在のトヨタグループ各社の精神的位置をしめ、受け継がれている。 トヨタはそれを「トヨタ基本理念」、「トヨタウェイ」に纏めなおし、世界のトヨタ社員の実践要領として活用している。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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