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第53回研究会

第一報告

  • 郭 万里(ICCS研究員):中国における日系食肉加工企業の現地生産・現地販売の拡大に関する一考察―NR社を事例として―

第二報告

  • 楊 晨(ICCS RA):「新小売」の視点から見る中国小売業「マーケティング戦略」の変容ー美団のマーケティング戦略を中心にー

報告1:郭 万里(ICCS研究員)
テーマ:中国における日系食肉加工企業の現地生産・現地販売の拡大に関する一考察
    ―NR社を事例として―

 本報告は、中国における食肉加工業界の環境が厳しくなっているなかで、日系食肉製造企業が中国系食品企業との提携による現地生産・現地販売を拡大させるための有効な企業行動の取組を明らかにすることを目的とした。
 近年、中国における食肉加工業界では、生産コストの上昇と小売価格の低迷による利益を得ることが容易ではない。企業はこの業界で生き残るため生産コストのうちの原材料費を削減する必要がある。こうしたなかで、事例企業社が売上を連年拡大させた要因についてヒアリング調査結果を踏まえて考察した結果、次のことが明らかになった。第1に、主要な原材料である中国産豚枝肉は価格の乱高下が見られるが、この中には秋季から冬季までは上昇するという特徴があった。この状況を踏まえ、事例企業は年間の卸売価格の変動が中国より緩いおよび季節別の価格変動が中国と相反するEU産豚枝肉を、親会社のEUの子会社から年間仕入重量ペースの20%を調達している。これによって、中国の豚枝肉価格が乱高下する時に原材料を安定的に調達することができ、さらに冬期になると1kgあたり38.9%の原材料コストを削減することが可能となった。第2に、中国の食肉安全問題の頻発により、製品の検疫コストをこれまで以上にかける必要が出てきたが、事例企業は提携会社の検疫センターの活用することによって、300万元(4,902万円)の設備投資と年間12万元(196万円/年)の人件費減少を実現した。第3に、事例企業は上記の企業行動を加えて、親会社の商品開発力や技術力を加味することによって、日本式の高度な製造技術で作られた商品を値頃感がある価格帯で販売できる企業行動の取組を実現した。これらの企業行動によって、2013年から2017年にかけて総売上も7,321万元から1億3,000万元へと1.8倍増拡大するとともに、生産量も2,173tから3,427tへ増えた。つまり、中国における現地生産・現地販売の拡大において有益ということが認識される。
 報告後、金先生と高橋先生から先行研究の不足、結論のまとめ方、HSコードの調べ方等のご指摘とごアドバイスを頂いた。以上のことから、今回開催した若手研究会では参加の皆様から御教示をいただき、大変有意義な時間を過ごすことができた。そして、これからの論文の修正にも大変役に立つと考えられる。



報告2:楊 晨(ICCS RA)
テーマ:「新小売」の視点から見る中国小売業「マーケティング戦略」の変容
             ー美団のマーケティング戦略を中心にー

 本報告の目的は今中国を代表するIT企業は「BAT」→「MAT」へと変貌しつつある背景で、Mを代表している美団の急成長要因とその事業戦略について検討する。
 美団点評は中国最大のO2O(オンライン・トゥ・オフライン)のプラットフォーム。口コミ総数は55億を超えており、アクティブユーザー数は4.5億を超え、中国では3〜4人に1人が使っていることになる、注目すべきところがある。先行研究では小売の輪理論と新小売の輪理論の基でこの二つの理論は新業態にふさわしい化どうかについて検討するつもりだ。中心は美団の新しい事業分類についてAパタンとBパタンまた、B1とB2のことである。
 Aパタンは供給と交易(約束)はオンラインで実施する。代表の企業はテンセント、Baidu、TIKTOK
 BパタンはO2Oを代表する、つまり供給と交易(約束)はオンラインとオフラインの融合
 B1:SKU を中心の供給。   代表している企業はアリババ、京東、アマゾン
 B2:location を中心のサービス。代表している企業は美団点評、モバイク、シェア自転車、Uber、携程、饿了么
 研究計画の枠組みについてはマーケティング戦略のSTP戦略を中心に分析して、またSTPによって横は一軸、縦は多軸事業戦略の実施することを補足した。具体的には:STP戦略のSはSegmentation:セグメンテーション:顧客を同質のニーズを持っているグループ(市場)に分ける。Targeting:ターゲティング:分けたグループ(市場)の中で、どこの市場を狙うかを決めるPositioning:ポジショニング:狙う市場の中での、自社の立ち位置を明確にすることを分ける。
具体的な事例として美団会社のフードデリバリーサービスと共同購入サービスの事例を取り上げてSTPを分析した。最後は無接触配送と生鮮デリバリーサービスの提供及びその取り組みについてまとめた。
 報告に対しては、金湛先生からBパタンのB2:location を中心のサービスを集中して、また業態の変容について「BAT」→「MAT」へと変貌の原因とその枠組みに関して注目すればよいと指摘した  以上の提言とコメントを頂いて、先行研究とのサーベイをしながら論文修正を進んでいきたいと思っている。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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