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若手研究会

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第46回研究会

第一報告

  • 椎名 一雄(ICCS研究員):秦漢時代の「庶人」

第二報告

  • 林 涛(ICCS RA):民泊政策をめぐる攻防

報告1:椎名 一雄(ICCS研究員)
テーマ:秦漢時代の「庶人」

 本報告の要旨は、下記のとおりである。これまで秦漢時代の「庶人」は、一般民(老百姓)だと考えられていた。報告者は、まず最新の出土文字資料『嶽麓書院藏秦簡』の知見から、「庶人」=「傅(兵役・徭役・仕官に関連する手続き)から除外される者」=「兵役・徭役・仕官から除外される存在」を明らかにした。その上で、秦漢時代に特殊な「庶人」が設定された意義を明確にした。すなわち、奴婢や刑徒から「庶人」に解放されて郷里社会へ帰還できる制度を、秦が初めて創設した。それは、帰還する(させる)ことを望む人々の要望を汲み取って、一方的な支配ではなく郷里社会に受け入れられる専制権力にもとづく秦帝国の形成に結びつき、漢は秦の「庶人」制度を継承して王朝を誕生させた。 報告後、周星先生から「傅」の具体的な手続きや「庶人」制度の時代変遷を究明すべきことなど今後の研究を展開する上で非常に重要な助言をいただいた。また曽根RAから、制度の適用範囲(国家が把握している人口)との関連を如何に考えるのか?などの有意義な質問がなされた。さらに、外部研究員の安達氏から、身分と税役の密接な関係について重要な指摘を受けた。これに対して、報告者が応答し、さらに今後の展望を述べた。


報告2:林 涛(ICCS RA)
テーマ:民泊政策をめぐる攻防

 今回の発表は最近メディアに登場率がとても高い「民泊」問題についての内容であった。民泊制度関連の動きのまとめから、日本政府、各自治体、世論の「民泊」に対する姿勢の変化を振り返りつつ、現在「民泊」が日本国内で苦境に立つ原因の分析をしてみた。日本民泊の歴史についても調べてみた。更に諸外国の民泊政策現状との比較をし、現在日本の民泊規制制度の是非を検討した。
 実際に愛知大学のそばにある民泊経営者への聞き取り調査の結果を通して、現場の生の声と政府自治体の制度の不備などを指摘してみた。
 発表後、周所長より「日本の民泊の起源である1964年東京オリンピックのホームステイ、そして2008年の北京オリンピックの外国人向けサービスの向上など、日中間共通のメンツ文化を確認することができる」とのご感想、徐涛ICCS研究員より学会発表の際、配布資料についてのご指摘、曽根RAより「都市にある安価傾向の民泊と地方にある体験型、地域活性化に繋がる民泊を分けて考える必要がある」とのご指摘をそれぞれ頂いた。これらのようなアドバイスは今後発表者の博士論文作成、また研究活動に生かされると思われる。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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