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第45回研究会

第一報告

  • 徐 涛(ICCS研究員):改革開放以降中国の世界認識と国際秩序観の変遷 ―党大会政治報告(1977~2017)の内容分析を中心に―

第二報告

  • 曽根 英秋(ICCS RA):中国におけるトヨタ合弁事業の展開と経営の諸課題

報告1:徐 涛(ICCS研究員)
テーマ:改革開放以降中国の世界認識と国際秩序観の変遷
      ―党大会政治報告(1977~2017)の内容分析を中心に―

 本報告は、改革開放以降の中国共産党全国代表大会(以下、党大会)における政治報告の内容分析を通じて、中国指導部の世界認識と国際秩序観の変容過程を検討する。党大会の政治報告、とくに対外政策に関する部分は、国際情勢に対する中国の認識や中国の対外方針を内外に示すものであり、中国の世界認識と対外政策を理解するうえで重要な材料となる。
 具体的には、1977年~2017年までの党大会の政治報告から、中国の世界認識に関連するキーワード(「第三世界」、「帝国主義」、「覇権主義」、「強権政治」、「世界平和」、「国際新秩序」、「国際秩序」、「総合国力」、「多極化」、「グローバル化」、「共同利益」、「多国間外交/枠組み」、「周辺」、「区域合作」、「国際関係の民主化」、「グローバル・ガバナンス」、「人類運命共同体」、「中華民族」など)を抽出し、その登場頻度や使われる文脈、時代状況を分析して、中国の世界認識の変遷を理解する。
 中国の党大会に対する内容分析を踏まえ、本報告は以下の結論を提示した。中国の世界認識は、(1)革命者的世界認識から、現実主義的発展途上国の世界認識へ(1977~1992)、(2)現実主義的発展途上国の世界認識から、協調的新興大国の世界認識へ(1992~2012)、(3)協調的新興大国の世界認識から、国際秩序をリードする強国の世界認識へ(2012~2017年)の三段階を経て変容してきたと思われる。


報告2:曽根 英秋(ICCS RA)
テーマ:中国におけるトヨタ合弁事業の展開と経営の諸課題

 本報告はトヨタ自動車の中国合弁事業の展開について経営上の諸課題を進出段階ごとに分析したもので、日系企業の中国事業展開時の参考となることを期待するものである。
 第一段階として、1995年から2000年代初期までの合弁事業については、資金も技術もない中国側合弁相手先と、中国進出に出遅れなんとか足がかりを築きたいトヨタの対等合弁であり、中国側の現物出資による過剰資本金、販売体系の不備からくる債権回収遅れ、合弁相手先人員の引き継ぎ等の問題を提議している。これは、単にトヨタの合弁事業に止まらず、外資自動車メーカーで最初に撤退した広州プジョーの合弁事業にも相似性が見られ、当時の合弁事業の普遍的問題であることが判る。
 第二段階としては2000年代中頃から現在に至るまでのトヨタ車両合弁事業の事例研究では、中国自動車投資法令上から第一汽車集団、広州汽車集団との二系列の合弁形態で、販売、R&D、人事面で股先状態を起因とする重複投資が発生している、また、2017年のトヨタ車の世界販売台数シェアは10.7%であるが、中国はその半分以下の4.5%と低迷しており劣位要因分析をし、中国自動車市場の変化に追随できておらず、スピード経営の問題について指摘している。
 第三段階としては2016年以降の電動車を中心とする新エネルギー車政策が急速に進展する自動車新時代において、中国におけるトヨタHEV戦略と中国新エネ車政策、及び外資出資比率規制の廃止と影響について分析を加えている。
 トヨタ中国合弁事業を評価をすると、第一段階の初期合弁の経験を反面教師として、その後の合弁事業の経営管理面に反映しており、経路依存性が見られる。第二段階の現在の第一汽車、広州汽車合弁から起因する股先状態については、外資出資比率規制の廃止(2022年)後に大きな変化が見込まれる。第三段階の新エネ車を中心とする自動車新時代においては、トヨタの得意とするHEV車は新エネに該当せず、苦しいスタートとなっている。中国は世界一の自動車販売国であり、トヨタも劣勢を挽回すべく2018年に生産能力の増強等の対策を実施しているが、トヨタが中国で世界並みシェアを獲得するためには大きな乖離があり動向を注目したい。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

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