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第30回研究会

報告

  • 田中周(ICCS研究員):中国辺境政策論:ウイグル族をめぐるイスラーム・テロと国家反テロ政策を事例として

 本報告はコウォジェイチク-田中マリア氏との共著論文「中国辺境政策論:ウイグル族をめぐるイスラーム・テロと国家反テロ政策を事例として」に関する発表である。
 本報告では、ウイグル族イスラーム過激派を、ウイグル族在外組織のより広い文脈の中で分析し、さらに中国政府の反テロ政策を分析した。加えて、重要な論点であるにもかかわらず十分な研究がなされてこなかった、中国の反テロ政策と辺境政策との関係を解明する事を目的とした。
 概要は次のとおりである。まず、テロに関する理論的諸問題を扱い、テーマ別に(一)テロと国家、(二)テロと歴史、(三)テロと宗教、(四)テロの諸理論、の四つに分類した。次に、中国の辺境政策に関連した主要問題を紹介し、国家の反テロ政策との関係を分析した。さらに(一)新疆における中国共産党の民族政策、(二)国家に対するウイグル族の社会的経済的な不平、(三)一九四九年以降の中国政府の支配に対するウイグル族の抵抗の歴史、(四)東トルキスタン・イスラーム運動(East Turkistan Islamic Movement: ETIM)とウイグル族ディアスポラの関係についての分析を通じて、ウイグル族分離主義の目的と本質を考察した。加えて、中国の反テロ政策を、(一)反テロ政策の構造、(二)新疆における反テロ戦略を構成する国内要素、(三)新疆における反テロ戦略を構成する国際要素、の三つの部分から分析した。結論は二つの部分からなり、(一)ウイグル族イスラーム・テロと中国の反テロ政策の二元的レベルの分析(dyadic level of analysis)を行い、(二)反テロ政策と辺境政策との間の相互依存メカニズムを解明することによって、中国の辺境政策を論じた。
 報告を受けて高橋先生、各研究員、各RAから貴重なコメント・質問がなされ、活発な議論が交わされた。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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