若手研究会
第25回研究会
- 開催日
- 開催場所
- 435研究室
報告
- 小嶋祐輔(ICCS研究員):新疆ウイグル自治区の開発と中央アジア貿易
新疆ウイグル自治区の開発政策において、中央アジア諸国との貿易(辺境貿易)は、伝統的にウイグル族が直接関わってきた数少ない領域の一つである。現在においても、報告者が調査を行ったウルムチ市内の辺境貿易市場では多くのウイグル人たちが「言語」という利点を活かして通訳、ブローカーの仕事をしている。彼/彼女らの多くは、そうした仕事をしている理由を「自分の能力でチャンスを掴める」、「取引相手とは文化が同じなのでうまくいく」と説明する。辺境貿易市場は、ウイグル人たちが自らの文化的・民族的資本(と見なすもの)を頼りに、同じ「中国人」として漢族と(ある程度)対等に競争できる場となっている。
しかし、辺境貿易の現状には課題も多く、自治区が中国沿海地方と中央アジアの中継地点として位置づけられているため、地元の製造・加工業が発展しておらず、地元住民、特に少数民族の雇用、職種・就業形態が限られてしまう点などが挙げられる。今後こうした課題を解消しつつ、対等・公正な競争の場を拡大していくことが重要であろう。