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第15回研究会

報告

  • 成田拓未(ICCS研究員):海南省におけるバナナ農業と農民専業合作社

 中国で設立の進む農民専業合作社の現状について、海南省の事例調査をもとに報告した。海南省では、1990年代以降、営利企業による大規模バナナ経営(主として荒地開墾)が展開した。そのことを通じて、海南省は中国を代表するバナナ産地へと成長するのみならず、バナナ企業によるバナナ生産技術の向上、その立地周辺地域の活性化(バナナ企業が支払う地代収入による)の可能性の創出、バナナ生産コストの削減などの効果が上がっているとされている。
 同時に、バナナ企業展開の限界として、収益性悪化による撤退の可能性を常にはらんでいること、バナナ企業が支払う賃金はもっぱら出稼ぎ労働者の手に渡っていること(地元出身者の労働者はほとんどいない)などが指摘されている。その中で、2006年設立、2008年農民専業合作社法に基づく登記を行ったFバナナ合作社の事例を取り上げ、その実態を明らかにした。F合作社は、バナナ企業を中心とする企業経営者20名の出資社員と、農民である非出資社員500名余りの組織である。
 技術の向上、資材の共同購入、販売先の確保など、少ないながら成果を上げている。しかしながら、農民自身の内発的な動機による設立ではないことから、農民による合作社の利用は安定性を欠いている。まとめとして、農民の内発的な動機に基づく合作社の運営へと転換していくことができるか否かが、中国農民合作社の発展の課題になると指摘した。
 議論では、営利企業と農民のいずれが農産物生産を担うかによって、地代分のコストの差が発生するというところから、合作社(農業協同組合)の根本的な存在意義の検討が求められるのではないか等、協同組合論をめぐる根源的な問題提起がなされた。


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文部科学省「21世紀COEプログラム」によって設立された愛知大学国際中国学研究センター(International Center for Chinese Studies:略称ICCS)は、本学大学院中国研究科博士課程を中核に、海外から招聘する世界レベルの学者を含む現代中国研究の国際的な研究・教育機関として、活動を行っております。

ICCSの研究における究極的目標は、伝統的な「中国学(Sinology)」にとどまらず、新たな学問分野として「現代中国学(Modern Sinology)」の構築に向けた努力を継続することにあります。これは日本発の世界的な取組みとなるでしょう。私たちは日本国内、中国をはじめとする世界の優れた仲間たちと、このための研究を進めています。

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