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第12回研究会

報告

  • 成田拓未(ICCS研究員):「中国農民専業合作社法施行後の農民組織化の現状」

中国では2006年に「中華人民共和国農民専業合作社法」が公布され、2007年の施行以来続々と農民専業合作社が設立されている。農民専業合作社は、協同組合原則に基づく農民組織として、中国の三農問題の解決策の一つとして注目されている。しかし、中国における「合作社」の歴史は必ずしも順調ではなかった。人民公社の失敗は農民に「合作社」への嫌悪感を植えつけ、また農業資材や農産物の流通をになった供銷合作社は改革開放とともに役割を縮小し、また企業的性格も強くしつつある。よって、農民専業合作社が本当の意味での合作社=協同組合として発展していくか否かが今後の重要な関心事となる。

そこで本報告では、個々の合作社の運営を直接的に規定する定款の内容と、合作社の運営実態について、議決権の行使状況、剰余分配の方法等に着目して検討した。その上で、合作社の協同組合的性格についての検討を試みた。

合作社によって、定款の規定と実際の運営実態は必ずしも一致していない。例えば、①剰余があるにも関わらず分配が行われていない、②一人一票の原則を逸脱するものの法律・定款が認めている「付加議決権」の規定については、実際は行使していないなどである。一方、社員への利益分配を実施し、農民の手取りを向上させている例もある。

設立初期であり、合作社の運営実績は十分蓄積されていない。現状では、合作社は多くの問題をはらんでいるが、協同組合としての発展していく芽もあり、今後の動向に一層注目する必要があるとした。

報告を受けての議論では、三農問題解決に果たす合作社の役割と限界、国家の統治に対して合作社が果たす役割など、幅広い見解が出された。


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